文体・語り口は純文学を一瞬で異世界転生モノ文学に変えてしまう。カフカを舞城王太郎が書いたら・・・

ある朝、グレゴール・ザムザが気がかりな夢から目ざめたとき、
自分がベッドの上で一匹の巨大な毒虫に変ってしまっているのに気づいた。
彼は甲殻のように固い背中を下にして横たわり、頭を少し上げると、何本もの弓型のすじにわかれてこんもりと盛り上がっている自分の茶色の腹が見えた。
「カフカ「変身」

カフカは20世紀を代表する前衛的な小説家だ。
「変身」はたんたんとした語り口で平然と不条理をうけいれる前衛文学だが、
これを2003年に「阿修羅ガール
で第16回三島由紀夫賞を受賞している舞城王太郎が書くとどうなるか?

あたりまえといってしまえばそれまでだが、重厚な前衛文学というより、
異世界転生モノファンタジーになってっしまう。
文体・語り口の選択がいかに印象を左右させるかわかるだろう。

では、さっそく、

「カフカ「変身」を舞城王太郎が書いてみると」
書き出し部分のみ 私が勝手に舞城王太郎氏の文体を真似て書きました。
朝、目がさめると、寝床の中のたくさんの足が私の意志とはうらはらにぴくぴく動いている。
なに、このグロテスクな私。
もどれ。
とか言ってももどるもんじゃない、この形。
昨日のお酒のせい?
酔わせてお持ち帰りしようとする佐野のこんたんが
見えすいているんだよ、とか言っても夢から覚めてくれるわけじゃない。
夢? 夢にしちゃこの足の痛み、リアル。
顔を上げると褐色の腹。
もうこんな姿、いくねえよ。なにこれなんて、半端ない洗礼、まじありえない転生。

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